サムスンを超一流企業に育てる。それが李健煕(イ・ゴンヒ)会長の目標だ。経営だけでなく技術研究やデザイン開発、人材育成で、斬新な発想を見せ、時には厳格な姿勢で臨む。
しかし、決してサムスンだけが利益を上げ、競争に勝ち残ればよいとは考えていない。「サムスン新経営」でも、ナンバーワン企業を目指しつつ、共に繁栄する道を模索している。そこで示された重要なキーワードが「相生」だ。
相生とは、中国古来の世界観を表す五行説から生まれた言葉だ。英語の「Win―Win」に近く、互いを生かし合うプラスの関係を意味する。
20世紀まではお互いの領土や資源を奪いあう、「相剋」の時代だった。しかし産業社会が発展した21世紀は、お互いが協力して、豊かさを追求する相生の時代にしたい。そう李会長は考える。
協力会社と一体化する
80年代半ばのこと、当時副会長だった李会長は、とある日本企業の下請け業者の社長と夕食をともにした。社長は、クライアントである電機メーカーの経営哲学や、その企業が抱える課題を、まるで自社のことのように真剣に語った。元請け会社の未来を心から気にかけている。李会長は、立場を超えて信頼し合う関係を築ける日本企業に、底力を感じ取った。
この経験から、サムスンと協力企業は「夫婦のような間柄」になるのが望ましいと考える。共に支え合い、信頼で結ばれ、互いの長所を生かす――。まさに、相生の哲学が反映された関係と言えるからだ。